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10月26日(土)
開会式9:30~9:40
演題発表に向けた特別講座9:45~11:00
口述発表11:10~12:00
昼食12:00~13:00
教育講座①13:00~14:30
「自閉スペクトラム症の感覚過敏の認知神経基盤」
国立障害者リハビリテーションセンター研究所井手 正和
近年、自閉スペクトラム症と感覚過敏との高い併存率について、統計学的・遺伝学に明らかになってきている。また、感覚過敏に関与する知覚特性が報告されてきたものの、その神経基盤については未解明である。我々は、中枢神経の代表的な抑制性の神経伝達物質であるGABAに着目してきた。GABA濃度の低下による神経の過剰な興奮が、高い刺激の処理精度に繋がり、感覚過敏を引き起こすとの仮説の下で研究を進めている。これまでの研究から、前頭葉のいくつかの領域が、刺激の時間情報処理の精度を促進/抑制することが示唆された。また、時間情報処理精度は感覚過敏の程度と関係し、それにはGABA濃度の低下が関与する可能性を見出した。これらの知覚的な処理精度が、個々人の不安の程度によって調節されていることも明らかになりつつある。本講演では、自閉スペクトラム症者の感覚過敏に関わる脳の神経活動状態と、それを調節する分子的・心理的特性について論じる。
教育講座②14:45~16:45
「脳内身体表現と運動制御のシステム」
国立研究開発法人 情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター内藤 栄一
四肢の位置や動きを脳に伝える自己(固有)受容感覚は、運動制御のみならず、姿勢や体位など自己の身体図式(像)の形成にも貢献する。本講演では、まず、筋肉からの運動感覚情報が、(1)運動領野で効率的に処理されること、(2)身体(病態)失認と関わりの深い、右半球下前頭-頭頂回路で処理されて自己の身体認知に至ること、(3)この回路が思春期以降に成熟し、より高次の自己(顔)認知の神経基盤を提供しうることを解説する。加えて、脳の運動制御機構に関しては、(1)運動制御において本質的な役割を担う大脳小脳連関の発達、(2)脳領域間の抑制からみてとれる成熟に伴う脳の運動機能の分化過程を紹介するとともに、加齢に伴う運動機能劣化の神経基盤にも言及する予定である。
交流会17:00~19:00
10月27日(日)
口述発表9:30~10:20
アート演題発表10:30~11:10
達人対談 “達人が自身に課してきた3ルール”11:10~12:40
昼食12:40~13:30
教育講座③13:30~15:30
「“触れる”を楽しく科学する ~触楽入門~」
慶応義塾大学 環境情報学部准教授仲谷 正史
本講演では、「触れることを研究する」ことを通して、感覚統合における触感覚の役割について考える契機を提供する。触れることを通して子供がどのような認知発達を獲得してゆくかについて、多くの養育者が関心を持ってはいても、それが一体、具体的にはどう役に立っているかについては研究の余地が残されている。講演者は6ヶ月から15ヶ月児が示す「見て・触れる探索行動」を定量化すること研究課題に取り組み、深層ニューラルネットワークを活用した動作解析ライブラリを援用して、子どもの探索行動を自動定量化する実験パラダイムの開発を実施してきた。この計測系を実際に利用した実験の結果に端緒を得て、講演者の研究室が実施している養育者の触れることに対する意識調査、市販の絵本に見られる触感オノマトペのデモグラフィー研究についても議論を進める。これら一連の研究事例を話題提供しながら、触れることを定性的でなく定量的に取り扱うことで感覚統合をより理解するための道筋を論じる。